Amplitudeが示すAI導入成功事例。既存企業がAI時代に組織を再構築し、失敗を避けるために必要な戦略と創業者マインドセットを完全解説。
スタートアップ創業者が知るべきAI時代の企業変革戦略:Amplitudeが教える成功事例
核心要約
- AIブーム時代の企業は戦略的思考が必須:技術トレンドに流されず、自社のビジネスモデルに合った活用方法を見極める必要があります
- 既存企業がAI導入に失敗する理由は明確:経営層の指示によるトップダウン推進で、現場のエンジニアが実装方法を理解していないことが主因です
- 組織全体のマインドセット変革が最優先:技術導入より先に、チーム全体が新しい思考様式を受け入れられる環境を整備することが成功の鍵です
- 創業者には1~2年で辞めたくなる時期が必ず来る:その岐路で踏ん張れるかどうかが成功と失敗を分ける重要な選別基準です
- スタートアップの最大の利点は柔軟性と学習姿勢:既成概念にとらわれず、新しい技術を業務に組み込み、成果を検証できるアジリティを持つことが競争優位性になります
AIブーム時代:企業が陥るトップダウンの罠
ChatGPTのリリースと急速なAI普及により、投資家や取締役会、営業幹部たちが「AI戦略を立てろ」と経営層に圧力をかける状況が多くの企業で見られました。Amplitudeでも例外ではなく、スペンサー・スケーツCEOのもとに「AI戦略は何か」という質問が何度も飛び込んできたのです。
しかし、この圧力がもたらす結果は、往々にして惨憺たるものです。経営層が号令を下すものの、現場のエンジニアたちは懐疑的です。なぜなら、当時のAIモデルの能力は「非常にでこぼこ」だったからです。ある分野では優れた性能を発揮する一方で、他の分野では全くひどいパフォーマンスに留まっていました。
何が可能であるかを深く理解していない人々から指示を受けるのは、エンジニアにとって極めてストレスフルな経験です。 このギャップが、多くの企業でAI導入が表面的に終わり、実質的な成果を生み出せない理由の一つになっています。
Amplitudeが最初に懐疑的だったのは、まさにこの理由です。共同創設者のジェフリーは、AIに関する「詐欺的な主張」が横行していることに強く不満を感じていました。「AIはあらゆる仕事を置き換え、豊かさを創出する」という壮大な約束は、実際のモデル能力とは乖離していたのです。
ソフトウェアエンジニアリングが示した「本物のAI可能性」
変化のきっかけは、意外な場所からやってきました。それは、AIがソフトウェアエンジニアリングにもたらした変革的な影響の目撃でした。
Cursor、Claude Code、Codexといったツールが登場すると、エンジニアたちの生産性は劇的に向上しました。これは単なる「便利なツール」の域を超えていました。開発者が実際に経験できる、否定の余地のない生産性向上が、Amplitudeの経営層の懐疑的な見方を一変させたのです。
2024年10月頃、Amplitudeはこの転換点で決定的な行動を取ります。シリコンバレーの伝説的人物ウェイド・チェンバースをエンジニアリングリーダーとして採用し、同時にYC企業のCommand AIを買収したのです。
ウェイドはAIに関する深い経験と、AIモデルの最先端にいる人的ネットワークを持ち込みました。Command AIチームが開発していた製品も、すでにAIの能力を効果的に活用することに長けていました。ユーザーの混乱を検知してガイドをトリガーする機能や、サポート質問に答えるチャットボットなど、実装例を通じてAIの実質的な価値を示していました。
「AIウィーク」:組織全体の思考様式を転換するターニングポイント
しかし、新しい人材と買収企業を迎え入れただけでは、800人規模の組織全体を変えることはできません。最大の課題は、既存のSaaSビジネスの成功体験に慣れきったチームが、AI時代の新しい思考様式を受け入れるプロセスでした。
Amplitudeが採った戦略は極めてシンプルにして効果的でした。スペンサーとウェイド、そしてCommand AIの創業者であるジェームズが中心になり、「AIウィーク」というイベントを企画したのです。当初は様々な理由で実現できませんでしたが、6月に実施することができました。
このイベントで重要だったのは、プロダクト、エンジニアリング、デザイン部門のリーダーたちに、AIで「本当に何が可能か」を見せることでした。 具体的な例として、プロダクトリーダーの一人が、組織全体の前でAmplitudeのダークモード機能を素早くコーディングしてみせました。
これは単なるテクニカルデモではありませんでした。それは、「全社的なリーダーシップがこれを重要だと考え、その実装方法を実演している」というメッセージを、全組織に対して強力に発信するものでした。 その結果、エンジニアやデザイナーたちは「これに乗らなければならない」という空気を感じ取り、自発的に行動を始めたのです。
AIウィークの残りの期間は、ハッカソンさながらの熱気に包まれました。チームメンバーたちはCursorなどのツールを導入し、既存の業務をより速く、より良く進める実験を始めました。
既存組織の再編成:古い考え方との決別
AIウィークで組織のマインドセットが変わり始めたとしても、構造的な課題が残っていました。SaaSの時代に成功した思考様式では、AI時代の要求に応えられない人材が確実に存在したのです。
Amplitudeは2025年初頭に、エンジニアリング、プロダクト、デザイン部門で大規模な組織再編を実行します。これは単なる「部署の統合」ではなく、思想的な立て直しに他なりませんでした。
SaaSの成功組織には、以下のような意思決定プロセスが根付いていました:
- 顧客に何を望んでいるかを尋ねる
- リクエストに優先順位をつける
- 構築する
- 提供する
- この全サイクルを繰り返す
このループは、顧客ニーズが明確で、市場要求が一定している状況では極めて効果的です。しかし、AIの能力は「非常にでこぼこ」であるため、「顧客が何を求めているか」という問いだけでは不足しているのです。
なぜなら、顧客自身が何が可能かを知らないからです。彼らが求めるのは、より速い馬(既存の延長線上の改善)か、実現不可能に近い理想か、あるいは実装方法が間違っているものです。
AI時代には、技術的に何が可能かを深く理解し、その可能性を顧客のニーズと照らし合わせるボトムアップの思考が不可欠です。 これは、SaaS時代の顧客主導のアプローチとは根本的に異なります。
Amplitudeは、SaaSの最先端にはいても、AI時代の要求を十分に理解していなかったリーダーや役員を配置転換する決断を下します。これは組織的には大きな混乱をもたらしました。1年の間に2回も大規模な再編を実施するというのは、通常であれば極めて破壊的です。
外部からの才能流入:YC企業との合同編成
しかし、Amplitudeはこの困難な時期を、むしろ組織活性化の機会として活用します。複数のYC企業を買収し、その創業者たちを迎え入れたのです。
Craftable(リーダー:Yana)、Manari(リーダー:EricとFrank)、June(リーダー:EnzoとFrucio)といった企業の買収により、AIネイティブな思考を持つ創業者たちが長年のAmplitudeチームと融合しました。
この組み合わせは、単なる人材統合ではなく、思想的な衝突と融合をもたらしました。 既存のAmplitudeチームが持つ「顧客ニーズを徹底的に理解し、それに応える製品を作る」という深い専門知識と、YCスタートアップが持つ「既成概念を打破し、新しい可能性から出発する」というマインドセットが交わったのです。
この融合により、以下のような相乗効果が生まれました:
- 既存のSaaS思考を持つエンジニア は、AIネイティブなチームから「ゼロから考え直す」というアプローチを学びました
- AIネイティブな若いエンジニア は、既存のAmplitudeチームから「ユーザーが実際に何に困っているのか」を学びました
AIウィークの成功を経て、組織内で最も適応に優れた人材が浮かび上がりました。 それは、コードが「顧客の問題を解決するための手段」に過ぎないと理解し、その上で新しい技術を熱心に受け入れた人たちでした。
ボトムアップで生まれたAI製品:エンジニアの内発的動機が駆動力
AIウィーク以降、Amplitudeが手がけるAI関連プロジェクトの多くは、極めてボトムアップな方式で生まれました。
例えば、当初Amplitudeが計画していなかったMCPサーバーは、エンジニアのブライアン・ジョージーが熱心に取り組んだものです。レオ・ジャンというエンジニアは、当初Amplitudeを辞めて自分の会社を立ち上げる予定でしたが、スペンサーが「給料をもらいながら学べば、後で資金提供する」と説得しました。レオが強く推し進めたのは「AI可視化」機能でした。スペンサー自身は最初これに懐疑的でしたが、レオが見出した大きなチャンスを尊重することにしました。
その結果は、劇的な成功でした。 AI可視化機能のローンチ以降、Amplitudeへの新規登録者数は2倍に跳ね上がりました。毎週、以前の2倍のペースで新しいユーザーが登録してくるという、言葉通りの急成長を経験したのです。
1月にローンチ予定の「Ask AI」は、Cursorに似たグローバルチャットインターフェースです。ユーザーはAIとチャットしながら、特定のチャートを抽出させたり、分析を行わせたり、データ内で何が起こっているかを解き明かさせたりできます。その結果は、エージェントのようにそれをユーザーに提供します。
この流れ全体を見ると、スペンサーとウェイドの役割は、これらの試みを組織内で成功させるための「仕組みを整える」ことだったのです。 彼らが指示した個別の機能ではなく、チーム全体が自発的に創意工夫できる環境を作ったことこそが、成功の鍵でした。
SaaSとAI:全く異なるビジネス判断の論理
これまでAmplitudeが習得してきた「SaaSのデリバリーループ」と、「AI時代のアプローチ」は、根本的に異なる思考を要求します。
SaaS時代のループ:
- 顧客に「何が欲しいか」を尋ねる
- リクエストの優先順位を決める
- 構築する
- 提供する
- このプロセスを繰り返す
このアプローチの強力な点は、顧客が何を望んでいるかを明確に伝えられることです。顧客は自分たちのニーズを言語化できるため、企業は確実に市場要求に応える製品を作れます。
しかし、AI時代には全く異なるアプローチが必要になります。
AIの能力が「非常にでこぼこ」(ある領域では優れ、他の領域では全く役に立たない)である以上、顧客にニーズを尋ねるだけでは不足しています。顧客が要求する可能性のあるもの:
- 「もっと速い馬」(既存の改善版)
- 実現不可能に近い理想
- 実装方法が根本的に間違っているソリューション
顧客自身が「何が可能か」を知らないため、企業は技術の最先端に立ち、「何が実現可能か」を深く理解した上で、顧客ニーズと照らし合わせる必要がある のです。
このパラダイムシフトが、既存のSaaS企業がAI導入で失敗する最大の理由です。
創業者の試行錯誤:SonaLightからAmplitudeへの軌跡
スペンサーがAmplitudeを立ち上げる前、彼と共同創設者は「SonaLight」という会社を起業していました。これは、Siriの初期バージョンとなるプロジェクトで、バックグラウンドでユーザーの音声を聞き取り、「Hey Siri」や「Hey Alexa」が登場する前に音声認識を実装するという、当時としては革新的なものでした。
彼らの知る限り、この技術を最初に発表したのはSonaLightチームでした。デモデーでは大きな話題を呼び、多くのプレス記事に取り上げられました。しかし、実際の製品と技術は、市場の要求を満たすには不十分でした。
デモデーの直後、彼らはSonaLightを閉鎖することを決断します。
この失敗経験は、スペンサーに深い教訓をもたらしました。彼は、チームが常に自社のサービスのアナリティクスを内部で構築していたことに気づきました。なぜなら、エンジニアとして、既存のアナリティクスツールに金を払うくらいなら「自分たちで作りたい」と思うのが自然だったからです。
彼らにとって、それが製品を構築する正しい方法であることは明らかでした。 製品内でユーザーが何をしたかを見て、彼らを深く理解し、より良い製品を構築し、反復するという、極めてシンプルで強力なアプローチです。
このアナリティクス側の取り組みを他の企業に見せたところ、「これが欲しい」という声が相次ぎました。YC Winter 2012のデモデー直後、2012年6月、スペンサーらはAmplitudeへのピボットを決断したのです。
当時、アナリティクス分野は既に混雑していました。しかし、スペンサーが取った姿勢は「これを学ぶことに全力を尽くそう」というものでした。彼は、自分がそれを「特にうまくやっている」とは思わなかったものの、「わたたちがそうすることを厭わず、次のもの、次のもの、次のものと構築し続けたからこそ、10年後には業界のリーダーになった」と振り返ります。
B2Bセールスの習得:コーチングと実践の力
アナリティクス分野に参入した初期段階で、スペンサーが直面した大きな課題が「B2B営業」でした。彼は正直に、「B2Bセールスが得意ではなく、今でも詐欺師のように感じている」と認めています。
しかし、エンジニアリングのバックグラウンドから、B2Bセールスをゼロから学ぶ意欲を持ち、「この市場開拓戦略がこの方法で行わなければならない」という学習プロセスを経たのです。
スペンサーの最大の誤解は、B2Bセールスが「本や記事から学べるもの」だと考えていたこと でした。しかし、現実はそうではありませんでした。
彼が転機を迎えたのは、営業担当役員のミッチ・ミランドという優れたコーチに出会ったときです。ミッチは、他の多くの企業をコーチしてきた経験を持っていました。スペンサーは「この人が必要な専門知識をすべて教えてくれるに違いない」と直感し、彼を採用することにしたのです。
ミッチは毎週やってきて、スペンサーを「徹底的に鍛え上げ」ました。特に重要だったのは、次のような指摘でした:
「スペンサー、それはビジネス上の痛みではない。本当の痛みは何だ?」
スペンサーが「チャート付きのダッシュボードを顧客は求めています」と答えると、ミッチはそれを否定します。なぜなら、それは表面的な機能であり、顧客の根本的なビジネス課題ではないからです。
この問答を繰り返す中で、スペンサーは初めて、営業とは何かを本当に理解し始めたのです。 それは、楽器を演奏したり、スポーツを習得したりするのと同じ性質のものです。本を読むだけではできるようにはならず、実際にやってみることが不可欠です。加えて、その傍らで優れたコーチからアドバイスを受けることが、学習を劇的に加速させるのです。
創業者の心理的試練:なぜ1~2年で辞めたくなるのか
スペンサーが『Founders at Work』を読んだとき、彼が感じた最大の共通項は、成功した創業者たちが皆、1~2年経った時点で「辞めるべきだ」と合理的に感じていた、ということでした。
この時期は、創業者にとって極めて危険な岐路です。
最初のアイデアの興奮が冷め、市場の反応が想像以上に困難であることが明らかになり、組織内の問題が日々表面化します。同時に、「もしこれを諦めて、別の仕事や大学院に戻ったら、どうなるだろうか」という選択肢が、非常にリアルで魅力的に見え始めます。
スペンサーの洞察は極めてシンプルにして強力です:
「成功した創業者は、何らかの理由で辞めず、その忍耐力が一番の選別基準となる」
しかし、ここで重要な条件があります。単に「意地で続ける」というだけでは、心理的に破綻します。スペンサーが強調するのは、「自分が何を学ぼうとしているのかを、心の中で明確にすること」の絶対的な重要性 です。
多くの起業家は失敗します。なぜなら、彼らは「なぜスタートアップを立ち上げるのか」「成功とは真に何を意味するのか」について、明確な理解を欠いているからです。
スペンサーの最高のアドバイスは、以下の通りです:
- 内発的動機を明確にする:外部からの評価、金銭的な報酬のためではなく、自分自身の内部から湧き上がる強い動機を持つこと
- 学びがどこから来るかにオープンである:自分が学ぼうとしていることが、意外な場所から、予期しない人から教えられるかもしれないという柔軟性を持つこと
- 困難な時期に立ち返る:1~2年経った「辞めたい」と感じる時期に、自分がこの事業に参入した根本的な理由に立ち返ることができる力を養うこと
スペンサー自身の場合、その理由は明確でした:
「テクノロジーを構築し、自分なりの方法で世界をより良い場所にするという目標」
この明確な目標があったからこそ、彼は「たとえ具体的な方法は分からなくても、最終的にはそこに立ち返ることができる」という確信を持つことができたのです。
AI時代における企業戦略:既存企業の利点と脆弱性
Amplitudeが直面した最大の課題は、「新しいスタートアップが、既存企業の領域を侵食する」という古典的な構図の中で、既存企業が実際に持つ利点は何か という問いでした。
スペンサーは、AI可視化分野を例に挙げます。多くのスタートアップが「AI可視化企業」として登場し、複雑なデータセットから自動的にインサイトを抽出する機能を提供し始めました。YCの毎バッチにも、こうした企業が複数含まれているほどです。
スタートアップのアドバンテージは明確です:
- 既存の顧客ベースがない ため、顧客がより実験的になれる
- 既存の収益源を守る必要がないため、全く新しいアプローチに全力投球できる
- 機能が完璧でなくても、顧客が寛容である
しかし、Amplitudeが取った戦略は、この脅威を逆手に取るものでした。
Amplitudeは、AI可視化機能を無料で提供する ことにしたのです。これは、数億ドル規模の既存の収益基盤を持つAmplitudeだからこそ、できる決断です。スタートアップには、このような選択肢はありません。無料で機能を提供しながら、事業を継続することは不可能だからです。
その結果、Amplitudeのリード生成は劇的に増加しました。より多くの人々が、高額の契約を結ぶという面倒な手続きを経ることなく、AI可視化の価値を体験できるようになったのです。
スペンサーの指摘は示唆的です:「真のビジネスはAI可視化の下流にあるべきだ」
SEOの世界に価値があるのと同じように、基本的な可視化機能そのものにも価値はあります。しかし、それは急速にコモディティ化します。本当のビジネスは、その機能を活用して、顧客が深い分析やインサイトを得ることを支援する部分にあるのです。
例えば、AirOpsというサービスを見ると、可視化機能も一部提供していますが、彼らの本当のビジネスは「ブログ投稿やその他のコンテンツ生成を支援する」というコンテンツ生成ビジネス全体です。
既存企業がAI時代に克服すべき組織的課題
スペンサーが2025年初頭(インタビュー時は2024年)に確信を持つようになったのは、Amplitudeという既存企業が、根本的な組織的変革を遂行できるかどうかが、AIの時代における競争力を決定する、ということでした。
そのプロセスは、技術導入よりも先に、思想的・組織的な変革が必須 であることを示しています:
経営層による号令ではなく、現場の理解から始める:AIウィークを通じて、リーダーたち自身がAIの実際の能力と限界を体験することが、組織全体の信頼を勝ち取る最初のステップになった
SaaS時代の思考様式からの決別:顧客のニーズに応えるという顧客主導の思考から、「技術の最先端で何が可能か」を理解する技術先行の思考へのパラダイムシフト
新しい人材と思想の統合:外部からの才能(ウェイド・チェンバース、買収企業の創業者たち)を迎え入れることで、既存の思考様式を刷新する
複数回にわたる大胆な組織再編:SaaS時代に成功した人材でも、AI時代の要求に応えられない場合、配置転換や退出を含む厳しい決断を下すこと
ボトムアップの創意工夫を奨励する環境作り:スペンサーとウェイドが重視したのは、個別の指示ではなく、チーム全体が自発的に新しい可能性を追求できる文化の形成
大企業CEOへの移行:創業者モードの本当の意味
スペンサーが強調する重要な点は、「創業者モード」という言葉が、しばしば誤解されている、ということです。
多くの人は、創業者モード = 「常に100%の詳細に深く関与し、あらゆる場所で主導する」だと考えます。しかし、800人の従業員を持つ組織では、物理的にそれは不可能です。
スペンサーの現在の課題は、次のような葛藤との折り合いをつけること です:
- 創業者時代:誰も自分に注目しないことから始まり、どんな注目でも必死に求める
- 大企業CEO時代:逆に、時間に対して極めて慎重に、ほとんどのことに「ノー」と言う必要がある
創業者として成功した人の大多数が、約10年後にCEOの座を去る理由は、このパラダイムシフトにあります。なぜなら、創業者として先頭に立つことと、大企業のリーダーであることは、根本的に異なる要求を課す からです。
スペンサーが気づいたのは、かつて自分が「自分で何も仕事をせず、他人の仕事を常に評価しているだけ」と批判していた大企業の幹部たちにも、その行動様式に理由があるということです。
時間の使い方:戦略的意思決定の重要性
スペンサーが現在、意識的に実行しようとしていることの一つは、もっとオープンになり、自分の考えと経験を声に出すこと です。
Twitterでのフィルターレスな発信に見られるように、彼は自分自身を表現することを意図的に選んでいます。公開企業のCEOとしては依然として制約がありますが、多くの幹部が極めて保守的であるのに対し、スペンサーは自分のストーリーを共有し、政治、宗教、製品、経営など、自分が確信を持つテーマについて声を上げています。
その根底にある考え方は、「本物であること」 です。
自分ではない別のペルソナになったり、自分ではない何かを代表したりするのではなく、自分が何者であるかを表現し、確信を持つことについて発言する。それによって、他の起業家たちが学べることがあるはずだという信念です。
スタートアップ創業者が知るべき最終的なメッセージ
スペンサーが、これからスタートアップを立ち上げようとしている若い起業家に対して発する最高のアドバイスは、シンプルにして最も重要なものです:
1. 「なぜ」を明確にする
- なぜスタートアップを立ち上げるのか
- 成功とは真に何を意味するのか
- この企業を通じて、自分は何を学びたいのか
この明確さの欠如が、起業の失敗の最大の原因です。
2. 1~2年の試練に耐える意志を持つ
- 創業から1~2年経つと、誰もが「理性的に考えれば、辞めるべき」という地点に到達します
- その岐路で踏ん張ることができるかどうかが、成功と失敗の選別基準になります
3. 学びの源泉にオープンである
- 自分が学ぼうとしていることが、どこから来るのかに敏感であること
- メンター、経験、予期しない環境から学ぶ柔軟性を持つこと
4. 内発的動機を保つ
- 外部からの評価や金銭的報酬のためではなく、自分自身の内部からの強い動機を基盤にすること
- そうでなければ、困難な時期を乗り越える力を持つことができません
スペンサー自身が、これまでのAmplitudeの歩みで学んだのは、「成功とは、継続的な学習と適応、そして明確な内発的動機に支えられた粘り強さの結果である」、ということです。
結論:AI時代における企業変革の本質
Amplitudeの事例が示すものは、テクノロジーの進化よりも、組織文化と思考様式の変革がいかに重要であるか という、根本的な真実です。
AI導入に失敗する企業の特徴:
- 経営層からのトップダウンの号令に現場のエンジニアが懐疑的
- SaaS時代の顧客主導の思考に固執
- 既存の成功体験に過度に依存
- 新しい思考様式を受け入れられない人材の配置を放置
Amplitudeが成功した要因:
- 組織全体にAIの実際の可能性を体験させるAIウィーク
- SaaS時代の思考様式からの決別
- 新しい人材と思想を積極的に取り込む大胆さ
- ボトムアップの創意工夫を奨励する環境構築
- チーム全体の内発的なコミットメント
スタートアップ創業者にとって最も重要なのは、テクノロジーの最先端にいることではなく、自分たちが何を学ぼうとしているのかを明確に理解し、その学びがどこから来るのかにオープンであり続けることです。
今後数年間、アナリティクス分野は完全に再構築されるでしょう。その変化をリードするのは、技術的な優位性を持つ企業ではなく、組織全体が新しい時代の要求に適応し、内発的な動機に支えられて行動する企業 なのです。
Original source: https://youtu.be/t8co94HS6tY?si=UagjaTevoKvTjoUj
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